日本の労働生産性の現状
労働生産性が低いと言われて久しい日本。2022年の調査によると、時間あたりの労働生産性はOECD加盟国38ヶ国中29位、一人当たりの労働生産性は32位となっています。主要先進7カ国で最も低く、製造業に限定しても19位という結果です。

低労働生産性の主な要因
1.長時間労働文化の定着
日本企業では長時間労働が常態化しており、「仕事が終わらなければ残業して終わらせれば良い」という気合・根性系の考え方が根強く残っています。この文化は従業員のパフォーマンス低下を招き、労働生産性の負のスパイラルを生んでいます。
2.付加価値創造力の課題
労働者数や労働時間の増加による生産性向上を重視してきた結果、他の先進国と比較して同じ付加価値を生み出すために多くの時間を要しています。
3.デジタルトランスフォーメーションの遅れ
多くの日本企業で見受けられる。
- レガシーシステムからの脱却の遅れ
- アナログな業務処理の継続
- デジタル技術活用の不足
4.評価制度の課題
年功序列制度や成果主義に基づく適切な評価制度の未整備により、従業員の生産性向上へのモチベーションが十分に引き出せていない状況があります。
5.個人裁量の制限
多くの日本企業では、決裁権が役職者に集中しており、個々の従業員の裁量が限定的です。これによって業務全体のパフォーマンスが低下し、労働生産性の低下を招いています。
6.無形資産投資の不足
研究開発や人材育成などの無形資産への投資が不足しています。この投資は長期的な労働生産性向上に不可欠ですが、日本企業はその重要性への認識が十分とは言えません。
深刻化する人材不足の課題
リクルートワークス研究所の「未来予測2040」によれば、2040年には日本全体で1100万人の働き手が不足すると予測されています。この課題に対して、企業は早急な対応を迫られています。

求められる対応策
1.顧客理解と価値創造の深化
適切かつ深い顧客理解と、モノの「機能的価値」だけでなく、ソリューションを提供する「意味的価値」の創造が必要です。マーケティング的に表現すれば、「顧客インサイト」の把握と活用が重要となります。
2.営業プロセスのデジタル化
営業(労働)生産性を向上させ、デジタル武装していくことが不可欠です。従来の「脚で稼ぐ営業スタイル」からの脱却が必要です。各種ツールによって人ではなく機械に処理させる部分は積極的に機械に頼ることが重要です。
ただし、ツールを導入することが目的化してはいけません。営業プロセス全体を見渡し、ボトルネックとなっている箇所をツールによって改善していくという思考が大切です。
3.顧客接点時間の最大化
人的リソースが限定的な営業担当者は、顧客との商談のために時間を投入できるよう、可能な限り顧客時間(ピュアセールス)以外の作業から開放することが重要です。
4.データドリブンな営業体制の構築
新たな名刺情報を獲得し、獲得した見込み顧客が課題解決のために自社プロダクトをリサーチしているシグナルを検知し、営業側がアプローチを開始する。このようなプロセスを効率的に実行するためには、各種デジタルツールが不可欠です。
まとめ
働き手不足の課題がますます深刻化していく状況下で、企業は従来の営業スタイルからの脱却が急務です。単なるプロモーション(販促)をマーケティングと誤解して活動しているのであれば、その認識を改め、売上に貢献するためのマーケティングオペレーションを実装する必要があります。
B2Bマーケティングは、企業の中期経営計画を体現するものであり、その未来に向けて最適なマーケティング体制とオペレーションも成長させていかねばなりません。デジタル技術を活用した効率的な営業・マーケティング体制の構築は、企業の持続的な成長に不可欠となっています。
出典
公益財団法人 日本生産性本部
https://www.jpc-net.jp/research/list/comparison.html
リクルートワークス研究所
https://www.works-i.com/research/report/forecast2040.html