デジタル時代のB2Bマーケティングの課題
デジタル技術の普及により、B2B企業の営業・マーケティング環境は大きく変化しています。従来の営業主導のビジネスモデルから、マーケティングと営業が連携した「レベニューオペレーション」の構築が重要となっています。
購買行動の変化
最新の調査データによると
- B2B購買者の約80%が購入決定前にオンラインリサーチを実施
- 営業担当者との接触は購買プロセスの70%が進行した後
- ミレニアル世代とZ世代が現在B2B購買者の64%を占め、購買決定の75%以上を担当

また、製造業のB2B取引における意思決定には、平均11.4人の関係者が関与するようになり、2016年の6.8人から大幅に増加しています。このように購買プロセスは複雑化し、デジタルチャネルの重要性が高まっています。

企業が直面する一般的な課題
B2B企業では、以下のような課題が多く見られます。
1.戦略面の課題
- マーケティング戦略が明確に定まっていない
- 適切なKGI・KPI設定ができていない
- 顧客理解・競合分析が不十分
2.組織面の課題
- マーケティング人材・リソースの不足(日本企業の78.1%が課題と回答)
- 業務の属人化による非効率
- 営業部門との連携不足
- 社内でのマーケティング施策への理解不足
3.施策面の課題
- 効果測定の未実施
- 適切な施策選定や予算配分の判断困難
- 一貫性のない施策実施
4.テクノロジー面の課題
- マーケティングツールの活用不足
- 適切なツール選定の難しさ
- データ分析・活用能力の不足
B2Bマーケティングコンサルティングの必要性
専門知識とデータ分析力の獲得
経済産業省の「2024年版ものづくり白書」でも指摘されているように、多くの企業では「デジタル化が企業の稼ぐ力の向上につながっていない」状況があります。特に戦略設計フェーズの人材不足は顕著であり、外部の専門家による支援は以下のようなメリットをもたらします。
- マーケティング戦略の専門知識の活用
- 客観的な視点からの課題発見
- データに基づいた意思決定プロセスの構築
- 業界のベストプラクティスの導入
既存リソースの最適化
B2Bマーケティングコンサルティングは、限られたリソースを最大限に活用する方法を提示します。
自社だけで取り組む場合: 個別施策の評価に終始し、全体最適化が難しい
コンサルティング活用の場合: 売上貢献の視点から施策を評価し、リソース配分を最適化

日本企業に適した組織変革の推進
外部コンサルタントは日本企業の文化や組織特性を理解し、最適な形でのデジタル変革を支援します。
- 日本の企業文化に合ったマーケティング組織の構築
- マーケティングと営業の役割分担の明確化
- デジタルツールを活用した業務効率化
- データ共有による部門間連携の強化
効果的なコンサルティングサービスの要素
効果的なB2Bマーケティングコンサルティングは、以下の3つのフェーズで構成されます。

1.マーケティング基礎構築フェーズ
ビジネス基盤の分析と戦略設計
- 現状把握と事業理解
- 営業活動の現状分析
- 既存マーケティング活動の評価
- 社内リソースの棚卸し
- 自社・顧客・競合理解
- 3C分析(自社・顧客・競合)
- SWOT分析とクロスSWOT
- ターゲット顧客の明確化
- 戦略設計
- ペルソナ定義
- バイヤーズジャーニー設計
- ポジショニングマップ作成
- 4C/4P分析
- KGI/KPI設定
良質なコンサルティングでは、成果物として「3C分析」「SWOT分析」「ターゲット顧客定義」「ペルソナ設計」「バイヤーズジャーニーマップ」などの戦略ドキュメントが提供されます。
2.オペレーション構築フェーズ
マーケティング活動の基盤整備
- リスト整備とデータ管理
- 顧客データベースの構築・整理
- MAツール(Marketing Automation)の導入支援
- データ連携の設計
- 業務フローの最適化
- マーケティングと営業の連携プロセス設計
- MQL(Marketing Qualified Lead:有望顧客)の定義
- リードスコアリング・グレーディング基準の設定
- パイプライン管理の仕組み構築
- レポート体制の確立
- マーケティング活動レポートフォーマット策定
- データ分析ダッシュボードの構築
- 定例会議体の設計
このフェーズでは、マーケティングオペレーション(MOps)の知見を活かし、既存体制を活かしながらも、効率的な運用体制の構築が重要です。
3.施策実行フェーズ
具体的なマーケティング活動の実行支援
- Webサイト強化
- SEO対策
- コンバージョン率最適化
- コンテンツマーケティング戦略
- 実名化チャネルの構築
- リード獲得フォームの最適化
- ランディングページの作成
- コンテンツオファーの設計
- 関係性維持・深耕施策
- ナーチャリングメール設計
- ウェビナー企画
- フォローアップシナリオ作成
- データ分析とPDCA
- 施策効果の定期的な分析
- ボトルネックの特定と改善策提案
- 継続的な最適化支援
優れたコンサルティングでは、戦略立案だけでなく、施策実行のディレクションサポートまで一貫して支援します。
データ駆動型アプローチがもたらす価値
B2Bマーケティングでは、様々なデータソースを統合的に分析し、マーケティング活動の売上貢献度を可視化することが重要です。

活用するデータソース
- GA4データ – ウェブサイト訪問者の行動分析
- MAツールデータ – 見込み客のエンゲージメント状況
- 検索エンジンデータ – 検索順位や競合状況
- 競合サイトデータ – 競合他社の戦略分析
- CRMデータ – 顧客との接点情報や商談状況
- 他、インターネットから収集できるビッグデータ
データ分析から得られる洞察
これらのデータを統合的に分析することで、以下のような具体的な洞察を得ることができます。
1.マーケティングファネル(パイプライン)分析
- 各ステージでの転換率とボトルネックの特定
- ステージ間の改善ポイントの発見
2.Webサイト最適化提案
- 訪問者が離脱するページの特定
- コンバージョンに貢献する流入経路の分析
- 高パフォーマンスコンテンツの特定
3.有望顧客の特定
- 購買意欲の高い見込み客の行動パターン分析
- 商談化確率の高いリードの予測
- 営業アプローチの優先順位付け
4.投資対効果の明確化
- マーケティング活動のROI測定
- 予算配分の最適化提案
- 次期施策の効果予測
AIを活用したデータ分析ツールを導入することで、定期的なデータ分析から具体的なアクションまでを月次で実施し、営業とマーケティングの組織間連携を強化することが可能になります。
B2Bマーケティングコンサルティングの一般的なプロセス
B2Bマーケティングコンサルティングは、クライアント企業の状況に合わせた柔軟な進行が一般的ですが、基本的には以下のようなステップで進行します
1.現状把握(1〜2ヶ月目)
- 事業理解と現状分析
- 営業・マーケティング活動の現状ヒアリング
- 既存データの分析
- 顧客インタビュー(必要に応じて)
- 社内意識啓蒙
- マーケティングの重要性に関する経営層向けセッション
- 部門横断ワークショップの実施
- 体制構築
- プロジェクトチームの編成
- 役割分担の明確化
- コミュニケーションプランの策定
2.戦略策定(2〜3ヶ月目)
- 自社・顧客・競合理解
- 各種分析の実施
- ペルソナワークショップ
- 競合分析セッション
- 戦略設計と課題抽出
- マーケティング戦略の策定
- 重点課題の特定
- 優先順位付け
- 実行計画の立案
- ロードマップの作成
- KPI設定ワークショップ
- 予算計画の立案
3.オペレーション構築(3〜4ヶ月目)
- フロー定義
- マーケティング・営業連携プロセスの設計
- 顧客情報管理方法の確立
- レポーティングサイクルの構築
- MQL定義
- 有望顧客の定義ワークショップ
- スコアリング・グレーディング基準の設定
- 営業部門との合意形成
- 実名化チャネルの確立
- フォーム設計
- リード獲得施策の計画
- コンテンツ制作計画の立案
4.施策実行と最適化(4〜6ヶ月目)
- 施策実行
- 優先度の高い施策から順次実施
- 実施状況のモニタリング
- 早期の成功事例創出
- データ分析とPDCA
- AI分析ツールの活用
- 定期レビューの実施
- 改善策の立案・実行
- 営業連携の強化
- マーケティング・営業合同レビュー
- リードフィードバックの仕組み構築
- 共通KPIの運用開始
効果的なコンサルティングでは、クライアント企業と協力会社を含めた定例会を月2回~4回程度設定し、PDCAサイクルを回すことで継続的な改善を実現します。マーケティング活動の成果を定期的に可視化し、経営層・マーケティング部門・営業部門・IS部門など社内の様々なステークホルダーとの連携を強化することが成功のカギとなります。
製造業におけるコンサルティング成功事例
実際の製造業企業におけるB2Bマーケティングコンサルティングの成功事例を見てみましょう。
事例1:産業材メーカーのデマンドセンター構築

課題:営業部門が個別に活動し、マーケティング機能が不在
対策:
- マーケティング戦略の策定
- デマンドセンター(マーケティング組織)の構築
- MAツール(Marketing Automation)の導入とオペレーション設計
- 営業部門との連携プロセス確立
成果:
- 新規リード獲得数が前年比230%増加
- 営業担当者の訪問アポイント効率が40%向上
- 営業活動の可視化により、商談予測精度が向上
- 6ヶ月で投資対効果(ROI)280%を達成
事例2:情報機器メーカーのWebサイト最適化

流通情報機器メーカーでは、Webサイトからの問い合わせが少なく、改善の方向性が見いだせない状況でした。AIを活用したデータ分析とマーケティングの専門家による支援で成果を上げています。
課題:Webサイトからの問い合わせが少なく、サイト改善の方向性が不明確
施策:
- AI分析によるデータ分析と課題ページの特定
- ユーザー行動パターンの分析
- コンテンツ改善とCTA(Call To Action)最適化
- フォーム設計の見直し
成果:
- サイト滞在時間が45%増加
- 問い合わせコンバージョン率が2.3倍に向上
- 資料ダウンロード数が月間平均で320%増加
- 獲得リードの質が向上し、商談化率が22%アップ
事例3:展示会マーケティングの最適化

大規模展示会に出展する製造業メーカーでは、高額な出展費用に対する効果測定ができず、投資対効果が不明確という課題がありました。B2Bマーケティングコンサルタントとの協業により、展示会マーケティングを最適化しました。
課題:高額な展示会出展費用に対する効果測定ができていない
施策:
- 展示会前後のデジタルマーケティング戦略策定
- QRコードやデジタルフォームを活用した来場者データ収集の仕組み構築
- MAツールを活用したフォローアップシナリオの設計
- 効果測定フレームワークの導入
成果:
- 展示会来場者のリード化率が35%向上
- フォローアップの効率化で営業工数を50%削減
- 展示会投資対効果(ROI)の可視化を実現
- 次回展示会予算の最適配分を実現
よくある質問(FAQ)
- B2Bマーケティングコンサルティングの費用相場はどれくらいですか?
-
B2Bマーケティングコンサルティングの費用は、支援内容や期間によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
初期戦略立案フェーズ:月額50万円〜150万円(2〜3ヶ月)
実行支援フェーズ:月額30万円〜40万円+施策実行費用(3〜6ヶ月)多くの場合、初期の戦略立案フェーズは固定費用、実行支援フェーズでは基本料金に加えて施策実行費用の一定割合(15〜25%程度)を手数料として支払うモデルが一般的です。企業規模や業界、課題の複雑さによって金額は変動します。
- B2Bマーケティングコンサルティングを依頼する際のポイントは?
-
以下の点を確認することをおすすめします:
- B2B領域の専門性:B2CとB2Bは大きく異なるため、B2B専門のコンサルタントを選ぶ
- 業界経験:自社の業界に関する知見や過去の支援実績があるか
- 具体的な成功事例:過去の支援で得られた定量的な成果を確認する
- 支援範囲の明確さ:戦略立案から実行支援まで、どこまでをカバーするか
- 社内リソースとの協業方法:既存リソースをどう活用するかの視点があるか
特に製造業のB2Bマーケティングでは業界知識が重要なため、業界特性を理解したコンサルタントを選ぶことが成功の鍵となります。
- MAツールの導入は必須ですか?
-
必須ではありませんが、一定規模以上のB2B企業ではMAツール(Marketing Automation)の導入によるメリットが大きいです。MAツールがなくても、Excelやメールツールを駆使した運用は可能ですが、以下の点で効率が大きく異なります:
- 顧客行動の自動トラッキング
- リードスコアリングの自動化
- シナリオに基づいた自動メール配信
- 営業とのスムーズなリード連携
まずは小規模から始めて、段階的に導入を検討することも可能です。国内で利用されている主なMAツールには、Marketo、HubSpot、Pardot、SATORI、BowNowなどがあります。初期費用と月額利用料、必要な機能を比較検討することをおすすめします。
- 効果が出るまでどれくらいの期間がかかりますか?
-
一般的に、以下のようなタイムラインが目安となります:
- 短期的効果(1〜3ヶ月):既存リソースの最適化、Webサイトの改善、リード獲得フォームの最適化など
- 中期的効果(3〜6ヶ月):有望顧客の増加、商談創出効率の向上、マーケティングと営業の連携強化など
- 長期的効果(6ヶ月以上):顧客生涯価値の向上、パイプライン予測精度の向上、マーケティングROIの安定化など
効果の現れ方は企業の状況や業界によって異なりますが、多くの場合、3〜6ヶ月程度で具体的な成果が見え始めます。特に製造業においては、検討期間が長い傾向があるため、長期的な視点での評価が重要です。
まとめ:B2Bマーケティングコンサルティングの投資対効果
B2Bマーケティングコンサルティングは、単なるコスト支出ではなく、企業の成長を加速させる投資と考えるべきです。適切なコンサルティング支援により、以下のような具体的な効果が期待できます。
短期的効果
- マーケティング戦略の明確化:企業の強みを活かした差別化戦略の構築
- リード獲得効率の向上:適切なターゲティングによる質の高いリードの獲得
- 営業工数の最適化:有望顧客への集中による営業効率の向上
中長期的効果
- 収益構造の改善:顧客獲得コスト(CAC)の低減と顧客生涯価値(LTV)の向上
- 組織能力の向上:社内マーケターのスキルアップとナレッジの蓄積
- データ駆動型経営の実現:意思決定プロセスの高度化と予測精度の向上
デジタル時代において、B2B企業が成長し続けるためには、従来の営業手法とデジタルマーケティングの融合が必須となっています。専門家によるコンサルティングは、その橋渡しとなり、企業の持続的な成長を支援します。
B2Bマーケティングコンサルティングへの投資は、適切に実施することで初期投資の3〜5倍のリターンをもたらすことも珍しくありません。自社のマーケティング課題と向き合い、専門家の支援を受けることで、競争が激化するB2B市場での差別化を図りましょう。
自社での取り組みのステップ
外部コンサルタントに依頼する前に、まずは自社で以下のようなステップに取り組むことも有効です:
- 現状分析: 営業活動やマーケティング活動の現状を数値で整理する
- 課題の明確化: 営業部門・マーケティング部門・経営層で認識している課題を洗い出す
- 目標設定: 達成したい具体的な目標(KGI・KPI)を設定する
- 外部支援の検討: 自社リソースだけでは解決できない課題について、外部支援を検討する
さらに製造業のマーケティング力を高めるために
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この記事の著者

コンサルタント
内村裕香 [プロフィール]
2015年よりB2B総合電機メーカーのマーケティング組織の立ち上げと社内定着化を行う。その後、株式会社ベネクロを設立。「製造業の未来を創る」をテーマにB2B企業の営業変革に向けて活動中。