日本国内のB2B製造業、特に歴史ある企業では、なぜマーケティングが根付いていないのでしょうか?私なりの考察です。
経営陣の背景
日本国内の歴史あるB2B製造業ほど、経営陣にB2Bマーケティングを体系的に学んだ層がほとんどいないのではないでしょうか。この背景にはいくつかの理由が考えられます。
まず、これらの企業の経営陣は多くの場合、製造業の技術やプロセスに長けた専門家が多く、そのキャリアの大半を技術的な分野で過ごしてきました。彼らは製品の開発や生産効率の向上に注力しており、マーケティングや顧客のニーズを理解することにはあまり時間を割いてこなかったのです。このため、マーケティングの重要性や具体的な手法についての知識が不足していることが多いと感じています。
さらに、こうした経営陣はプロダクトアウトの時代に成功を収めてきました。この時代は、良い製品さえ作れば自然と売れるという考え方が一般的でしたし、その成功体験がを引き継いでしまっている可能性があります。
そのため、新しいマーケティング手法や戦略を導入する必要性を感じにくくなっているのではないでしょうか。実際現場まかせだと思います。
また、日本のB2B製造業においては、経営陣が長期的に企業に在籍し、内部昇進によってそのポジションに就くことが一般的です。これは企業の文化やプロセスを深く理解する上で役立ちますが、一方で外部からの新しい視点や最新のマーケティング知識を取り入れる機会を減少させています。その結果、経営陣にマーケティングの専門知識を持つ人材が少ないという状況が生まれています。
小会社というポジションであった場合、親会社から一定の年齢に達した方が降りてきて経営層にジョインするという状態であった場合、それはかなり深刻な状態だと言えます。(そもそも組織の新陳代謝が行われない)
CMOの不在
日本の多くのB2B製造業では、CMO(最高マーケティング責任者)のポジションが存在しないか、あまり重要視されていないことがとても多いです。これはなぜなのでしょうか。
まず、伝統的な日本企業では、マーケティングよりも製品開発や生産効率に重点が置かれることが多いです。そのため、マーケティングの重要性が認識されにくく、専門的な知識を持つCMOの必要性が理解されにくい状況があります。また、内部昇進が一般的な日本企業では、マーケティングの専門知識を持つ人材が経営層に昇進する機会が限られています。
一方、CMOというポジションを有する企業は、外部からの視点を取り入れることに成功していると言えます。特に、グローバルに展開している企業や新しい市場に挑戦している企業では、外部からマーケティングの専門家を招くことで、企業全体のマーケティング戦略を強化しています。
CMOの不在は、企業のマーケティング活動における戦略的視点の欠如を招きがちです。マーケティング施策が断片的になり、全社的な視点での統合的なマーケティング戦略が立てにくくなります。このため、企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、CMOの役割を明確にし、そのポジションにふさわしい人材を配置することが重要なのです。
組織の壁:
「組織の壁」もマーケティング活動の推進を阻む大きな要因となっていると感じます。
この「組織の壁」ですが、特に経営陣にマーケティングを理解している人が不在であることから生じています。
まず、世の中の動向に敏感な若い層が自発的にマーケティング活動に取り組むケースです。いわゆるボトムアップです。彼らは現場での経験や最新のマーケティング手法を活用しようとしますが、往々にして他の業務と兼務しているため、片手間での実行となってしまいます。このような状況では、十分なリソースや時間を割くことができず、効果的なマーケティング活動を展開することが難しくなります。
さらに、マーケティング活動の成功には営業部門との連携が不可欠ですが、経営陣からの明確な指示やサポートがないため、組織横断的な連携が不足します。経営陣がマーケティングの重要性を理解し、組織全体での協力体制を築くような指令を出していないため、各部門がバラバラに動いてしまうのです。この結果、マーケティング部門と営業部門の間での情報共有や共同戦略の策定が滞り、マーケティング活動が効果を発揮できない状態に陥ります。
誤った理解:
マーケティングに対する誤った理解が根付いていることも、大きな課題の一つとして感じています。特に、マーケティング活動が「単なる施策の実行」として認識されてしまい、その戦略的意義が十分に理解されていないケースです。
前途の通り、その活動がボトムアップで進められることが多いのですが、経営層の理解と支持が欠けているため、マーケティング活動はしばしば限定的なリソースの中で行われてしまい、結果として、単なるプロモーション施策や広告キャンペーンに終始してしまうことが多いです。このような状況では、全社的な視点に立った統合的なマーケティング戦略が欠如し、短期的な効果を狙った施策のみが繰り返されることになります。
これによってマーケティングを支援している。マーケティング担当です。という言葉に対して、「広告」「SEO」「SNS」をやっているんですか?という反応をいただく事が殆どの理由だと思います。
どうすればよいのか
マーケティングが単なる施策として誤解されることが多いことは前途の通りなのですが、展示会はその誤解を解く鍵となるイベントだと思っています。展示会はリードジェネレーション、リードナーチャリング、営業との連携など、B2Bマーケティングの重要な要素をすべて含んでおり、B2Bマーケティングの縮図です。展示会によって、これら要素のすべてを実践する絶好の機会なわけです。
まず、展示会では多くの見込み客(リード)と直接対話できますし、リードジェネレーションの場としてとてもに有効です。新規顧客の獲得や既存顧客との関係強化を図る場になります。
さらに、展示会で集めたリードをフォローアップし、関係を深めるリードナーチャリングのプロセスは、B2B企業にとってとても重要なので、見込み客との継続的なコミュニケーションを通じて、顧客との関係性維持、深耕によって信頼関係を構築できます。
また、展示会は営業部門との連携が欠かせない場でもあります。マーケティング部門と営業部門が協力してリードを獲得し、その後のフォローアップや商談に結びつけるための戦略を練ることができます。
B2Bマーケティングを実践する場として最適な展示会のプロジェクトマネージャーには、ぜひマネージャー層が手を上げてチャレンジいただきたいです。
全社または事業部として大きな額を投じる展示会は、必然的に経営層が関与しますし、プロジェクトを後方支援します。そして、そこには組織横断の横串が欠くことができません。
プロジェクトマネージャーになってしまえば、普段指示・依頼することができない、他部門のメンバーに対して行動を促すことが出来てしまいます。この機会を上手に使ってしまいましょう。
会期後はその成果を報告する事になるでしょう。
これは、いわば経営層の教育の機会とも捉えることができると思います。
展示会は単に名刺情報を集め、既存顧客を呼ぶ場として捉えている経営層に対して、リードジェネレーションとリードナーチャリング、セールス側との連携、言い換えれば展示会の全体最適の視点から各フェーズのKPIポイントから得た各種データをもって報告します。
きっとB2Bマーケティングを学び、うずうずしているマネージャー層が熱量をもって取り組んだ展示会の成果は、経営層に新しい気付きを提供することは間違いないと思います。
まとめ
とはいえ展示会は、B2Bマーケティングにおける1つの施策に過ぎません。
正しいマーケティングの理解のためには、
経営層の教育:
マーケティングの重要性を経営層に理解してもらうために、エグゼクティブ向けのマーケティング研修やセミナーを受講いただきたいです。最新のマーケティング手法や戦略を学ぶ機会を提供し、経営陣の意識改革を促したいところです。
全社的なマーケティング戦略の策定:
マーケティング部門を孤立させず、企業全体の戦略に組み込むことが重要です。クロスファンクショナルチームを編成し、各部門と連携しながら統合的なマーケティング戦略を策定できるような環境づくりが重要と思います。
外部専門家の活用:
外部のマーケティング専門家をアドバイザーとして招き、最新のマーケティングトレンドや戦略を導入する支援を仰ぎます。これにより、企業内部の固定観念を打破し、新しい視点を取り入れることができるでしょう。
マーケティング施策のスペシャリストは多いですが、ジェネラリストの視点からのB2Bマーケティングを理解する人材はとても限られていると思います。外部からの採用はとても難しい現実もありますし、社員を中長期的に育成していくことも必要ですが多くの時間を要します。
持続的なマーケティング活動の実施:
短期的な施策に終始せず、長期的な視点からのマーケティング活動を推進していきます。
経営層は、マーケティングへの取り組み=短期的な視点でいくら売上伸びるんだ。となってしまう傾向は強いです。
しかしながら、本当の意味でのマーケティングの取り組みは、組織文化の変革なので、数ヶ月で実現するものではありません。数年は余裕で必要な取組になります。しかしながら、数字に貢献しないマーケティングを中長期的に行っているわけにもいかず、ここは短期的な施策を並行しつつ、数字に貢献しながらも、中長期的な視点で文化を作っていく活動を並行できるかがポイントだと思います。
B2Bマーケティングは、感性ではなくデータ優位のマーケティングです。
データ分析を活用し、顧客のニーズを的確に捉えた戦略を立て、持続可能な成長を目指すためにも、適切なツールを選定、導入し活動していきたいですね。
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