Forrester B2B Summit 2026現地報告から考える、これからのWebサイトと営業の設計
「当社の課題を解決できる会社はどこか」「A社とB社はどう違うのか」。こうした質問を、顧客がAIに投げかけるようになりました。
企業のWebサイトを訪れる前に、解決方法を調べ、複数の会社を比較し、相談する候補を絞る。企業がまだ顧客の存在に気づいていない段階で、購買の検討が進む場面が生まれています。
この変化に、企業はどう対応すればよいのでしょうか。
2026年10月1日、神奈川ニュービジネス協議会(KNBC)のセミナーで「『AIに見つけてもらう』Webサイトのつくり方」をテーマにお話ししました。本記事では、米国フェニックスで開催されたForrester B2B Summit North America 2026に現地参加して得た知見と、営業・マーケティングの実務経験をもとに、企業が見直したいポイントを整理します。
■ 顧客の情報収集に、AIが加わっている
Forrester Researchは、企業の顧客・市場・テクノロジーを調査し、経営や事業の意思決定を支援する米国の調査・助言会社です。B2B領域では、マーケティング・営業・製品部門が顧客の購買行動にどう対応するかを研究しています。
Forresterの「Buyers’ Journey Survey, 2025」では、B2Bバイヤーの94%が購買プロセスでAIを利用していると報告されています[1]。これは日本国内の利用率を示した数字ではありません。ただ、顧客が情報を集める場所として、企業サイトや営業担当者に加えてAIが重要になっていることを示す調査結果です。
私が現地の議論を通して強く感じたのは、企業が「自社サイトへ来てもらうこと」だけを起点に、顧客との関係を設計していては足りなくなるということでした。
例えば、営業の効率化に悩む担当者が、AIに次のような質問をするとします。
「営業担当者が顧客リストを順番に回っています。商談につながりやすい顧客を優先するには、どんな方法がありますか?」
そこから「当社の規模でも使える方法は?」「導入時に何を準備する?」「支援してくれる会社は?」と質問を深める。その間、企業サイトを訪れずに、課題の整理や候補の比較が進む場合があります。
サイトに来た時点で、顧客はすでにサービスの概要や競合との違いを知っているかもしれません。同じ1回の訪問でも、顧客が持っている知識と、知りたい情報が変わります。

■ アクセス数だけでは、検討の全体像が見えない
AIの回答で情報を得て、リンクをクリックせずに検討を進める行動は、「ゼロクリック」と呼ばれます。
企業側から見ると、自社サイトのアクセス解析には現れない検討があるということです。アクセス数が少ないからといって、自社が検討されていないとは限りません。一方で、そもそもAI上で候補に入っていなければ、サイトへ来る機会そのものを失っている可能性もあります。
アクセス数や問い合わせ数の確認に加え、AIが自社をどう説明しているか、どんな質問で社名が登場するか、その説明に何を参照しているかを見る必要があります。
ここでは、二つのことを分けて確認します。
・AIの回答に、自社名が登場すること
・AIの回答の根拠として、自社サイトが引用されること
他のサイトの情報をもとに、自社が紹介されることもあります。社名が出たという確認だけで終わらず、説明の内容と参照元まで見ることが大切です。
■ ファネルとMAを運用しながら、AI上の比較検討にも備える
私は東芝グループで、MA(Marketing Automation)の導入と、営業1,000名規模の組織への運用定着に取り組んできました。
MAは、Webサイトの閲覧や資料請求、メールへの反応などを捉え、見込み顧客との関係を育て、営業へ引き継ぐために使う仕組みです。その運用では、認知、関心、比較、問い合わせ、商談といった段階を表す「ファネル」が、管理の見取り図として用いられます。
顧客の動きは実際には行き来しますが、各段階の人数や通過率を確認すると、どこを改善すべきかが見えます。営業とマーケティングが連携するうえで、こうした運用は引き続き必要です。
そこに今、企業が捉えにくいAI上の情報収集や比較検討が加わりました。
ベネクロでは、顧客との接点を育てる従来の営業・マーケティングと、接点ができる前に候補に入るための情報整備を、併走させる必要があると考えています。

展示会、メール、セミナー、営業活動を継続・改善しながら、AIを通じて調べられたときにも、自社の提供価値が正しく伝わる状態をつくる。企業にとって、対応する範囲が広がっているのです。
■ サイト改善の出発点は「会社をどう説明するか」
AIへの対応を始めるとき、最初に整理したいのは事業の説明です。
- 誰の、どんな課題を解決する会社なのか
- 何を提供し、どこまで支援するのか
- 他の選択肢と、何が違うのか
- その説明を裏づける実績や経験は何か
この説明が曖昧なままでは、サイトのデザインや技術的な設定を整えても、顧客が自社を選ぶ理由は伝わりにくいままです。
制作会社に「AI対策」を依頼する前に、経営・営業・サービス担当者の間で、自社の価値をどう説明するかを揃える。そのうえで、次の五つを点検します。
■ 1.知ってほしい基本情報を、フォームの外に出す
これまで、ホワイトペーパーなどの資料にフォームを設け、氏名やメールアドレスを入力した方へ提供する施策が広く行われてきました。
一方、フォーム入力後にだけ読める情報は、通常のWeb検索やAI検索が公開ページを取得するときの情報源にはなりにくくなります。顧客も、内容を確認する前に個人情報を求められると、そこで離れる可能性があります。
課題の解説、解決方法の考え方、サービスの基本情報、選定のポイントなど、まず知ってもらいたい内容は公開する。これがアンゲート化の考え方です。
ベネクロでは、購買の段階に合わせて、公開情報とゲート内の資料を設計することを提案しています。
【知る】
課題の解説、改善の考え方、機能概要、よくある質問などを公開する。
【比較する】
サービスの特徴、対応範囲、利用場面、適用条件、選定ポイントなどを公開する。
【意思決定へ進む】
費用の目安を詳しく示す資料、詳細事例集、詳細機能比較、費用対効果の試算シート、稟議資料など、導入判断を深める資料にゲートを設ける。

公開ページにも、候補を選ぶために必要な判断材料を残します。ゲート内の資料には、検討をさらに進める価値を持たせる。情報の役割を分けることが重要です。
■ 2.顧客の質問を、コンテンツの入口にする
「導入について」「柔軟に対応します」「詳細はお問い合わせください」。企業サイトでよく見かける説明ですが、顧客が知りたいことに十分答えているでしょうか。
例えば、見出しを「導入までに何が必要ですか?」に変え、必要な準備、進め方、期間の目安、対応条件を具体的に示します。
おすすめしたい構成は、「質問 → 答え → 条件・根拠」です。

まず質問に答え、次に適用できる条件や注意点、実績などを示す。Forresterの公開資料でも、購買の各段階で顧客が尋ねる質問を想定し、それに答えるコンテンツを整えることが提案されています[2]。
最初は、営業担当者が繰り返し受ける三つの質問から始められます。「当社にも合うか」「導入までに何が必要か」「他の方法とどう違うか」。社内に蓄積された回答を、顧客が自分で読める情報に変えていきます。
■ 3.自社サイトの外にある情報も点検する
自社サイトを更新しても、過去のプレスリリースや団体の会員紹介、外部ブログ、SNSのプロフィールなどに古い説明が残っていることがあります。
すでに終了したサービス、以前の価格、古い会社情報。顧客がそれらを読むと、現在の提供内容との食い違いが生じます。AI検索の回答に参照される場合も、同じ問題が起こり得ます。

自社で修正できるページは更新し、外部の運営者に訂正を依頼できる情報は確認する。過去のリリースを歴史的な記録として残す場合には、現在の情報へたどれる案内を整える。LinkedInなどのプロフィールも、現在の事業や専門性と揃えます。
そして、誰が、何を、いつ確認するかを決めます。価格は営業責任者、仕様はサービス担当者など、内容に責任を持つ人とWeb更新担当者が連携する運用が必要です。
■ 4.人が読む説明と、構造化データを揃える
Webページには、見出しや本文による説明に加え、情報の種類や関係を機械向けに記述する「構造化データ」があります。
Schema.orgは、会社やサービスなどの情報を記述するための共通ルールです。例えば、サービスを表す「Service」に、名称、説明、提供者などを記述できます[3]。
人が読むページに「株式会社サンプルが営業改善コンサルティングを提供している」と書く。構造化データにも、同じサービス名、説明、提供会社を記述する。大切なのは、ページに表示している事実と記述内容を一致させることです。

Googleは、AI OverviewsやAI Modeに表示されるための特別なSchemaは不要と説明しています。また、構造化データとページ上の説明を一致させることを案内しています[4]。設定すれば必ずAIに引用されるというものではありません。検索で取得できる状態、本文の説明、内部リンクなどと合わせて整えます。
■ 5.自社の説明に、顧客と第三者の根拠を添える
「導入後も運用の定着まで支援します」と自社が説明するだけでなく、顧客がどのような支援を受け、何が変わったのかを示すと、提供価値を具体的に確認できます。
導入事例では、「なぜ選んだか」「どんな支援を受けたか」「導入後に何が変わったか」を顧客の経験に基づいてまとめます。成果の数字を出す場合は、期間や条件も添えます。
レビュー、業界メディアの取材、第三者機関の認証なども、確認できる根拠になります。

なお、自社が外部媒体に出した記事やプレスリリースは、外部チャネルにある自社発信です。顧客や第三者による評価とは区別し、誰が何を述べているのかを明確にします。
■ まず、AIが自社をどう説明しているか確かめる
最初の点検として、AIに次の質問をしてみてください。
「株式会社○○は、何を解決する会社ですか?」
「どんな企業・顧客に向いていますか?」
「現在、何を提供していますか?」
「その説明は、何の情報に基づいていますか?」
検索機能を使い、参照元も確認します。記憶している会話の影響を避けるため、自社の情報を教えていない新しい会話で試し、AIサービス、質問文、実施日を記録すると比較しやすくなります。
一度の回答で判断せず、複数の質問やAIサービスで、誤り、欠落、古い情報がないかを見ます。そのうえで、「営業の効率化に悩む製造業には、どんな支援会社があるか」など、顧客が課題から調べる質問でも確認します。
自社名を指定すると正しく説明されることと、顧客の課題から候補として挙がることには違いがあります。まず説明の土台を整え、次にどんな課題や条件で候補に入るかを検証していくことが必要です。
■ 顧客との接点を育てながら、接点の前にも備える
AIを介した購買行動への対応は、Web担当者だけの仕事には収まりません。
事業をどう説明するかは経営の課題であり、顧客の質問を知るのは営業の役割です。サービスの条件や実績を整理するには現場の協力が必要です。情報を公開し、更新し、点検するには、マーケティングと制作・技術担当者の連携が欠かせません。
従来の営業・マーケティングを継続・改善しながら、顧客がAIで調べる段階にも、自社の価値が正しく伝わる情報を用意する。その両方を進めることが、これからの営業改革につながると考えています。
まずは、AIが自社をどう説明しているかを確かめてください。そこで見つかった誤りや不足が、情報整備を始める具体的な入口になります。
ベネクロは、BtoB企業のGo-to-Market戦略と営業・マーケティングの運用を、設計から実装・定着まで支援しています。AI時代のWebサイトについても、事業の提供価値、顧客の購買行動、コンテンツ、更新の仕組みをつなげて設計します。自社の取り組みをどこから見直すか、お困りの際はご相談ください。
【参考資料】
[1]Forrester, “B2B Buyers Make Zero-Click Number One”, 2026年1月22日。Buyers’ Journey Survey, 2025に基づく公開記事。
https://www.forrester.com/blogs/b2b_buyers_make_zero_click_buying_number_one/
[2]Forrester, “The Marketer’s Guide To Answer Engine Optimization”。
https://www.forrester.com/blogs/from-prompts-to-presents-the-marketers-guide-to-answer-engine-optimization/
[3]Schema.org, “Service”。
https://schema.org/Service
[4]Google Search Central, “AI features and your website”。
https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features
AI時代のWeb戦略・設計
AIから見た「自社の見え方」を確認してみませんか
ベネクロでは、BtoB企業のWebサイトについて、 AI上での企業・サービスの見え方、情報設計、コンテンツ、 構造化データ、外部情報まで確認し、 改善すべきポイントを整理します。
30分で相談する ›この記事について
本記事は、2026年10月1日に神奈川ニュービジネス協議会(KNBC)
IT・DX委員会主催ウェビナー
「AIに見つけてもらうWebサイトのつくり方」で、
株式会社ベネクロ代表・内村裕香が講演した内容を再構成したものです。
講演内容には、Forrester B2B Summit North America 2026で得た
一次情報および関連調査を含みます。
著者:内村 裕香
株式会社ベネクロ 代表取締役
B2B Go-to-Market戦略・RevOpsコンサルタント
プロフィールを見る
https://benecro.co.jp/company/profile/
公開日:2026年10月7日
更新日:2026年10月7日
AEOとは何ですか?
Answer Engine Optimizationの略で、生成AIやAI検索などの回答エンジンに、自社やサービスを正しく理解・参照してもらうための情報設計です。
SEOとAEOは何が違いますか?
SEOは検索結果からWebサイトへの流入を主に考えますが、AEOではAIの回答内で企業やサービスが候補として紹介されることも対象になります。SEOを置き換えるものではなく、両方に対応する考え方です。
AIに見つけてもらうために、最初に何をすべきですか?
まずChatGPTやGeminiなどに自社について質問し、「何を提供する会社か」「どんな顧客に向いているか」「競合との違い」が正しく説明されるかを確認します。
構造化データを入れればAIに表示されますか?
構造化データだけで表示が保証されるわけではありません。ページ本文、会社・サービス情報、外部サイトの情報、顧客事例などと合わせて、内容の一貫性と信頼性を整える必要があります。
ホワイトペーパーはフォームを外した方がいいですか?
すべて外す必要はありません。課題解説や比較情報などAIにも読ませたい情報は公開し、個別提案、詳細資料、見積もりなど検討後半の情報にフォームを置く考え方が適しています。

