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Forrester Connected GTM Frameworkとは─ Forrester が示す5フェーズと、Revenue Operations が担う役割

Forrester Connected GTM Frameworkとは ─ Forrester が示す5フェーズと、Revenue Operations が担う役割
目次

この記事の要約】

  • Connected GTM Framework(コネクテッド GTM フレームワーク/部門連携型 市場参入設計)とは、Forrester Research が2026年4月の B2B Summit North America にて初公開した、B2B企業の Go-to-Market(市場参入・売り方の全体設計)プロセスを5フェーズで設計する枠組み
  • 「家を建てる」比喩で語られ、戦略策定から測定・最適化までを部門横断で連携させることを目的とする
  • 中核は Phase 3(execution requirements / 実行要件設計)であり、ここから Phase 5 までを Revenue Operations(収益オペレーション部門)が筆頭責任者として担う
  • Revenue Operations は「ツール管理部門」ではなく、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断する水平機能であり、収益創出のオーケストレーターとして機能する
  • 日本のB2B企業は、Phase 3 が決定的に欠落しているケースが多く、戦略と実行の間に「橋」を架ける組織設計が急務となっている

※ 本記事には英語の専門用語が登場しますが、初出時に日本語での補足を入れています。B2B マーケティング業界に馴染みのない経営者・事業責任者の方も、流れを追って理解いただける構成です。記事末尾に用語の補足解説をまとめています。

はじめに ─ GTM Singularity への解答としての Connected GTM

前回の記事「GTM Singularity とは何か」では、Forrester(米国の主要 B2B 調査・コンサルティング会社)が2026年4月の B2B Summit North America で打ち出した問題提起 ─ B2B の Go-to-Market(GTM / 市場参入・売り方の全体設計) 方程式が機能しなくなる転換点が来ている ─ を整理しました。

この問題提起の直後に、同じサミットで Forrester が提示した「解答」が、本記事のテーマである Connected GTM Framework です。

5つの構造的圧力(マクロ経済の不確実性/リモート勤務によるチームの分断/購買グループの肥大化/買い手の自己完結化/販売サイクルの長期化)に AI という加速剤が加わって壊れつつある GTM を、どう再設計するか。Forrester が示したのは、戦略から実行までを5つのフェーズで意図的に連携させる、新しい設計図でした。

本記事では、Connected GTM Framework の定義、5つのフェーズ、各フェーズの責任構造、そして日本のB2B企業がこの枠組みをどう適用すべきかを、Forrester の原典に基づいて整理します。

Connected GTM Framework とは(定義)

Connected GTM Framework とは、マーケティング・営業・カスタマーサクセス(顧客の成功と継続を支援する機能)・プロダクト(製品開発)の各チームを意図的に連携させ、ひとつのレベニュー(収益)創出プロセスとして機能させるための設計図 です。

2026年4月の Forrester B2B Summit North America にて、Forrester の VP・Principal Analyst(主席アナリスト)の Katie Fabiszak、Principal Analyst(プリンシパル・アナリスト)の Rick Bradberry らが登壇した「Disconnected GTM Efforts Will Ruin Your Company(分断された GTM の取り組みが、会社を破滅させる)」セッションで初公開されました。

Forrester は、この枠組みを 「家を建てる」 という比喩で説明しています。

家を建てるとき、私たちは設計図なしに壁から作り始めることはしない。 基礎を整え、構造を設計し、配管・配電を計画し、そして実行する。 GTM も同じであるべきだ。

すなわち、GTM は思いつきで施策を積み上げる行為ではなく、戦略 → 計画 → 実行要件設計 → 実行 → 測定 という建築的な順序を持ったプロセスとして再定義されるべきだ、というメッセージです。

なぜ今 Connected GTM が必要か(3つの動因)

Connected GTM が必要とされる背景には、3つの動因があります。

動因1. Functional evolution(機能の進化)

米国のB2B企業において、各機能(マーケティング・営業・カスタマーサクセス・プロダクト)は、過去20年で大きく進化してきました。

  • 「人」中心の業務から「プロセス」中心の業務へ
  • 「テクノロジーをツールとして使う」から「AI を組み込んだワークフロー(仕事の流れ)を設計する」へ
  • 「機能のサイロ化(部門ごとの縦割り)」から「機能の相互依存」へ

ただし、ここで重要なのが日本のB2B企業の現状は、米国とは大きく異なるという点です。

  • B2B マーケティング部門そのものが存在しない、または2010年以降に立ち上がった企業が多数
  • カスタマーサクセスという機能は、SaaS 業界を除けばまだ一般的ではない
  • 「マーケティング」が「販促」「広報」「展示会担当」と狭く理解されているケースも多い

つまり、日本のB2B企業の多くは、米国が20年かけて積み上げてきた「機能ごとの専門化・成熟化」をまだ完了していない段階にあります。

この差は、Connected GTM への移行において、二重の課題を生みます。

  1. 各機能をまず「専門化」「成熟化」させる必要がある(米国が20年かけてやってきたこと)
  2. 同時に、米国がいま直面している「機能間の不整合」も予防的に設計する必要がある(Connected GTM)

機能の進化途上にある日本企業だからこそ、Connected な設計を「あとから付け足す」のではなく、「機能を立ち上げる段階から組み込む」発想が重要になります。これが当社(株式会社ベネクロ)が掲げている「世界の最前線を、日本の現場で機能する形に翻案する」という意味でもあります。

動因2. Internal dysfunction(組織内の機能不全)

進化の不揃いに加え、組織内部で以下の機能不全が同時進行しています。

  • 部門ごとに優先順位が異なる
  • 指標(KPI)が部門単位で最適化され、全社視点で整合しない
  • 限られたリソースを部門間で奪い合う

これらは、各部門が個別に頑張っていても、全体としては逆効果になる構造を生み出しています。

動因3. External disruption(外的要因による変化)

そして外部では、GTM Singularity の5つの構造的圧力 ─ マクロ経済の不確実性、リモート勤務によるチームの分断、購買グループの肥大化、買い手の自己完結化、販売サイクルの長期化 ─ が同時に進行しています。

3つの動因(機能の進化/組織内の機能不全/外的要因による変化)が重なった結果、従来型の「部門ごとに最適化する」アプローチでは、もはや収益創出を担保できない状況に至りました。

これが、Connected GTM が「あれば良いもの」ではなく「必要不可欠なもの」となった背景です。

Disconnected GTM が引き起こす3つの損失

Forrester は、GTM が Disconnected(ディスコネクテッド/分断)状態にあるとき、3つのステークホルダー(関係者)が損失を被ると指摘しています。

損失1. Buyers(買い手・顧客)が失うもの

  • 混乱:マーケティングの言うことと営業の言うことが違う、営業の言うことと納品担当の言うことが違う
  • 信頼の低下:一貫性のないコミュニケーションがブランドへの不信を生む
  • 解約率の上昇:購買後の体験が期待と異なり、契約継続意欲が下がる

損失2. Partners(協業先・代理店)が失うもの

  • エンゲージメント(関与度)の低下:パートナーが企業の戦略と連携できず、推進力を失う
  • チャネルコンフリクト:直販・代理店・パートナーの役割が曖昧になり、競合化する
  • ロイヤルティ(継続意欲)の低下:明確な共創関係が築けず、長期的な提携意欲が薄れる

損失3. Companies(自社)が失うもの

  • 売上目標の未達:個別施策は実行されても、全体として収益に結びつかない
  • リソースの浪費:重複した施策、無駄な人員配置、効果のない投資
  • 成長の停滞:構造的問題が解決されないまま、目先の対症療法を繰り返す

つまり、Disconnected な状態を放置することは、買い手・パートナー・自社のすべてに損失を生むのです。


Connected GTM Framework の5フェーズ

ここからが本記事の中核です。Forrester は、Connected GTM を実現するための設計を、以下の5フェーズで定義しています。

Phase 1: GTM strategy           → 戦略策定
Phase 2: GTM planning           → 計画策定
Phase 3: execution requirements → 実行要件設計  ★ ボトルネック
Phase 4: GTM execution          → 実行
Phase 5: measurement and        → 測定と最適化
        optimization

各フェーズには、Key stakeholders(主要な関係者)Inputs(このフェーズに入ってくる情報・素材)Core artifacts / Outputs(このフェーズで生み出す成果物) が定義されています。

Phase 1: GTM strategy(戦略策定)

目的:会社全体の成長戦略を、収益創出の観点で設計する。

Key stakeholders(主要な関係者)

  • CEO / CFO(最高経営責任者・最高財務責任者)
  • 各機能リーダー(マーケティング・営業・プロダクト・カスタマーサクセス)

Inputs(投入される情報)

  • 事業ポートフォリオ(自社が持つ事業・製品ラインの全体構成)
  • 競合環境
  • 市場機会

Outputs(生み出す成果物)

  • 成長戦略
  • 収益目標
  • ポートフォリオアーキテクチャ(製品・サービスの構造設計)
  • ターゲット購買層の定義

このフェーズはまだ「ビジネスとしてどう成長するか」のレベル。GTM という表現は使われますが、実態は経営戦略です。

Phase 2: GTM planning(計画策定)

目的:Phase 1 で定義した戦略を、機能横断で「具体的にどう動くか」に落とし込む。

Key stakeholders

  • 各機能リーダー
  • Revenue Operations leader(収益オペレーション部門の責任者:この時点から登場)
  • Portfolio marketing leader(プロダクトマーケティング ─ 製品ラインアップ全体のマーケティング戦略責任者)
  • Partner ecosystem leader(パートナー連携の統括責任者)

Outputs

  • GTM 戦略の1ページサマリー(戦略を1枚にまとめた要約)
  • 収益目標の機能別分解
  • 収益生産プラン(誰が、いつまでに、何を)

このフェーズで、各機能が共通の目標を握り、計画を共有します。ただし、Forrester の調査によれば、Phase 2 こそが Alignment Crisis(連携不全 ─ 部門間の足並みが揃わなくなる状況)が起きる最初のポイント でもあります。データ管理プラットフォーム企業 Collibra(コリブラ)の CMO(最高マーケティング責任者)Thomas Brence 氏は、サミットでこう述べていました。

GTM 戦略を策定することは重要だが、本当の連携不全が起きるのは、収益計画の段階だ。 戦略を計画に落とし込む過程で、各機能の解釈がバラバラになる。

Phase 3: execution requirements(実行要件設計)★

目的:戦略と計画を、実行可能なオペレーション(業務として動かせる仕組み)に落とし込む。

Key stakeholders

  • Revenue Operations leader(収益オペレーション部門の責任者:このフェーズで筆頭責任者になる)
  • セールス・マーケティング・プロダクト・カスタマーサクセスのリーダーシップチーム
  • パートナーエコシステム、プロダクトマーケティング、Revenue Enablement leader(営業・マーケ・CS の能力強化責任者)の各リーダー

Outputs

  • GTM プレイブック(市場参入の具体的な行動指針集 ─ 誰が、何を、どう、いつやるかをまとめた実務マニュアル)
  • 機能別の詳細計画
  • KPI(重要業績指標)設計
  • システム要件・データ要件
  • プロセス・ワークフロー設計

このフェーズが、Connected GTM Framework の最重要かつ最も見落とされがちな層 です。

戦略(Phase 1, 2)から実行(Phase 4)へ進む際、多くの組織は「計画ができたから、あとは現場が頑張ればいい」と Phase 3 をスキップします。しかし、戦略を実行可能なオペレーションに落とし込む層が決定的に欠落すると、結局のところ Phase 4 で「思い思いに実行する各部門」が量産されるだけです。

そしてここで Forrester が明確にしたのが、Phase 3 の筆頭責任者は Revenue Operations leader であるという位置付けです。

Phase 4: GTM execution(実行)

目的:設計に基づいて、現場で施策を実行する。

Key stakeholders

  • Revenue Operations leader(筆頭責任者)
  • セールス・マーケティング・プロダクト・カスタマーサクセスのリーダーシップチーム
  • パートナーエコシステム、プロダクトマーケティング、Revenue Enablement
  • 各機能の現場担当者

Outputs

  • 週次・月次・四半期の クロスファンクショナル(部門横断)GTM ケイデンス(定期運営 ─ 定例ミーティングや定期報告で、組織を継続的に動かす仕組み)
  • キャンペーン、ABM(Account-Based Marketing / 重点顧客に的を絞ったマーケティング)、ナーチャリング(見込み顧客との関係構築)、商談化、契約化の具体的アクション
  • 機能間の連携の実体化

データ分析プラットフォーム企業 Alteryx(アルタリクス)の Sr. VP(Senior Vice President / 上級副社長)、Field Marketing & Demand Generation の Will Spendlove 氏は、サミットでこのフェーズの実装事例を共有していました。

私たちは毎週金曜日に、クロスファンクショナル GTM 戦略の横断ミーティングを行っている。 マーケ・営業・CS・プロダクトのリーダーが集まり、その週に何が起きたか、来週何をするかを話し合う。 この運営サイクルができてから、組織が見違えるように動き始めた。

「見違えるように動き始めた」と語られた背景にあるのは、週次のケイデンス(定期運営)が Connected GTM を実装可能にしているという事実です。

Phase 5: measurement and optimization(測定と最適化)

目的:実行の結果を測定し、改善のサイクルを回す。

Key stakeholders

  • Revenue Operations leader(筆頭責任者)
  • Revenue Enablement leader
  • セールス・マーケティング・プロダクト・カスタマーサクセスの各リーダーシップチーム
  • パートナーエコシステム、プロダクトマーケティングの各リーダー
  • 機能別の貢献者(functional contributors ─ 各機能の実務担当者)

Outputs

  • 統合 GTM レポート
  • 機能別ダッシュボード
  • GTM パスウェイ監査(buyer journey / 買い手の購買行動経路の検証 ─「想定した流れと、実際の動きにズレがないか」を見直す作業)
  • 次サイクルへの改善提案

ここでも筆頭責任者は Revenue Operations leader。Phase 3 〜 Phase 5 を通して、Revenue Operations leaderが一貫して GTM の運営者である というのが、Forrester の Framework が示す責任構造です。


Revenue Operations の本質

ここで重要な誤解を解いておきましょう。

日本では Revenue Operations(RevOps / レブオプス)が「営業効率化ツールの管理部署」「CRM(顧客関係管理システム)の運用担当」と矮小化して理解されているケースが少なくありません。しかし、Forrester の Framework で位置付けられている RevOps は、まったく異なる役割を持ちます。

Revenue Operations の正しい定義

Revenue Operations とは、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断して、レベニュー(収益)を追いかける水平機能 です。

つまり

  • ある特定の部門ではなく、部門横断
  • ある特定のツールではなく、プロセス全体
  • ある特定の指標ではなく、収益創出の全体最適

を担う役割です。

Phase 3 〜 Phase 5 における Revenue Operations の役割

Forrester の Framework では、Revenue Operations leader は以下の3フェーズで筆頭責任者として位置付けられています。

PhaseRevenue Operations の役割
Phase 3: execution requirements戦略を実行可能なオペレーションに落とし込む設計者
Phase 4: GTM execution部門横断の実行を運営するオーケストレーター(指揮者)
Phase 5: measurement and optimization全体最適の観点で測定し、改善を回す責任者

つまり Revenue Operations は、「ツール管理」ではなく「収益創出プロセスの設計者・運営者・改善者」 なのです。

日本のB2B企業で「うちには RevOps はいない」と言われる場合、それは多くの場合、この水平(横断)機能そのものが組織に存在していないことを意味します。「営業企画」「営業推進」と呼ばれる部署が近い役割を持つ場合もありますが、マーケとカスタマーサクセスまで含めた水平統合機能としては成立していないことがほとんどです。


なぜ Phase 3 がボトルネックになるのか

Connected GTM Framework の中で、最もボトルネック(流れが詰まる箇所)になりやすいのが Phase 3 です。

理由1. 戦略と実行の橋渡し層であるため

Phase 1 は経営戦略の延長、Phase 4 は現場の実行 ─ どちらも従来の組織で誰かが担っています。しかし「戦略を実行可能なオペレーションに落とし込む層」を明示的に担う役割は、多くの組織で存在しません。

結果として、戦略は経営層が描き、実行は現場が頑張る ─ 間に断絶が生まれます。

理由2. データが示す現実

36% in a red circle (left) and 43% in a yellow circle (right) representing B2B marketing decision-makers and sales operations professionals, respectively.

Forrester の調査では、以下のデータが明らかになっています。

  • B2B マーケティングの意思決定者のうち、自社のアナリティクス(データ分析の仕組み)を信頼しているのは 36% のみ
  • 営業オペレーションの意思決定者のうち、自社のアナリティクスを信頼しているのは 43% のみ
  • プロダクトマーケティングの意思決定者のうち、GTM 戦略が定期的に伝達されていると感じているのは 50% のみ

これらの数値が示すのは、Phase 3(実行要件設計)が機能していないために、データが信頼できず、戦略が現場に伝わっていない、という現実です。

理由3. Phase 3 のスキップが連鎖的な失敗を生む

Phase 3 がスキップされると、以下の連鎖が発生します。

Phase 3 の不在
  ↓
KPI が機能別にバラバラ
  ↓
データが統合されない
  ↓
Phase 4(実行)で各部門が独自に動く
  ↓
Phase 5(測定)で全体最適の判断ができない
  ↓
改善が部分最適に終わる
  ↓
組織は「頑張っているのに数字が伸びない」状態に陥る

これが、日本の B2B 企業の多くで観測される構造的な失敗パターンです。


日本のB2B企業における Connected GTM 導入の現実

ここまでの整理を踏まえて、日本のB2B企業が Connected GTM を実装する際に直面する現実を3点整理します。

現実1. 部門別最適化が組織文化として根付いている

日本のB2B企業の多くは、長年「営業」「営業推進」「営業企画」「事業企画」、近年では「DX推進」など、営業を中心とした部門編成が続いてきました。マーケティング部門が存在する企業でも、その多くは2010年以降に立ち上がったもので、組織の中心にはまだ位置していません。

そして各部門は独立した KPI で評価されてきたため、部門横断で連携する仕組みも、文化的な前提もほぼ整備されてきませんでした。

この文化の下では、「マーケと営業を意図的に連携させる」というアプローチそのものが、組織文化として馴染みにくいのが現実です。Connected GTM は技術ではなく組織設計の問題であり、トップマネジメント(経営層)の明示的なコミットメント(強い意志と関与)がなければ実装は困難です。

現実2. Revenue Operations が存在しないか、矮小化されている

前述の通り、日本のB2B企業では Revenue Operations 機能そのものが存在しないか、「ツール管理部署」として狭く運用されているケースが多いです。

Connected GTM Framework の中核を担う水平機能が組織にない状態で、いきなり Framework を導入しようとしても機能しません。まず RevOps の役割を組織内で再定義し、適切な権限と責任を与えるところから始める必要があります。

現実3. 段階的アプローチの設計が必要

「いきなり Phase 1 〜 Phase 5 を全部やる」のは現実的ではありません。多くの日本のB2B企業に推奨される現実的なアプローチは

Step 1: 現状把握
  ─ どのフェーズが欠落しているか、どこが Disconnected か診断

Step 2: Phase 3 の確立
  ─ 戦略を実行可能なオペレーションに落とし込む仕組みを最初に作る

Step 3: Revenue Operations 機能の設計
  ─ Phase 3 〜 5 を一貫して担う水平機能の組織設計

Step 4: クロスファンクショナル(部門横断)・ケイデンスの導入
  ─ 週次・月次の部門横断の定期運営の実装

Step 5: 測定と最適化のサイクル化
  ─ Phase 5 を定常運営に組み込み、継続的改善を実現

段階的に、しかし確実に Phase 3 から Phase 5 までを Revenue Operations leaderが運営する状態を目指すことが、Connected GTM の日本における現実的な導入経路です。


何から始めるか(Forrester の推奨アクション3つ)

Forrester はサミットで、Connected GTM への移行のために以下3つのアクションを推奨していました。

アクション1. Evaluate readiness(準備度の評価)

まず、自社の現状がどこにあるのかを診断します。

  • 5つのフェーズのうち、明示的に運営されているのはどれか
  • Phase 3(実行要件設計)を担っている役割は組織内に存在するか
  • Revenue Operations 機能はどのように位置付けられているか
  • 部門間のケイデンス(定期運営の仕組み)は存在するか

アクション2. Assemble core GTM artifacts(中核となる GTM 成果物の整備)

Connected GTM の運営には、以下の中核的な成果物が必要です。

  • GTM 戦略の1ページサマリー
  • ターゲット購買層の定義
  • 機能別の収益目標分解
  • GTM プレイブック(実行のための行動指針集)
  • 統合 GTM ダッシュボード

これらが揃っているか、揃っていなければ何から作り始めるかを決めます。

アクション3. Establish joint governance and frontline cadences(共同ガバナンスと現場ケイデンスの確立)

最後に、Connected GTM を持続させる運営体制を整えます。

  • 共同ガバナンス:マーケ・営業・カスタマーサクセス・プロダクトの各リーダーが共同で意思決定するボード(合議体)
  • 現場ケイデンス:週次・月次の部門横断の運営定例

特に「週次の現場ケイデンス」は、Alteryx の事例が示すように、Connected GTM を実際に機能させる鍵です。


まとめ ─ Disconnected を Connected に変えるために

Connected GTM Framework は、戦略・計画・実行・測定を5つのフェーズで意図的に連携させる枠組みです。その中核は Phase 3(execution requirements / 実行要件設計)にあり、ここから Phase 5 までを Revenue Operations leader が筆頭責任者として担います。

日本のB2B企業の多くにとって、Connected GTM は単なる「新しいフレームワーク」ではなく、組織設計の問い直しです。Phase 3 を埋め、Revenue Operations を水平機能として再定義し、部門横断のケイデンスを確立する ─ ここまでやって、ようやく Disconnected な状態を Connected に変えられます。

GTM Singularity 時代に、日本のB2B企業が選べる道は3つです。

  1. 旧来のリニアファネル(一直線の購買プロセスを前提とした古典的なレベニューモデル)前提のレベニュープロセスを延命する
  2. 米国の試行錯誤を10年遅れで追いかける
  3. Connected GTM を、日本の組織文化に合わせて実装する

日本のB2B企業が選べる第3の道 ─ Connected GTM を、現場で機能する形に翻案する道筋を、本シリーズの後続記事で引き続き解説していきます。


用語の補足解説

本記事に登場した主な英語・専門用語の意味を、まとめて記載しておきます。

用語意味
GTM(Go-to-Market)市場参入・売り方の全体設計。製品・サービスをどう市場に届けるかの戦略
Connected GTM部門横断で意図的に連携させた GTM
Disconnected GTM部門間で分断された GTM 状態
Revenue Operations(RevOps)マーケ・営業・カスタマーサクセスを横断して収益創出全体を運営する水平機能
MOps(Marketing Operations)マーケティング機能内のプロセス・データ・テクノロジー運営
カスタマーサクセス(CS)顧客の事業成功を継続的に支援する機能
MA(Marketing Automation)マーケティング業務を自動化するツール(メール配信・スコアリング等)
MQL(Marketing Qualified Lead)マーケティング部門が一定の見込み度を確認したリード(見込み顧客)
CRM(Customer Relationship Management)顧客情報・営業活動を管理するシステム
SDR(Sales Development Representative)営業の初期段階(アポイント獲得など)を担うインサイドセールス担当
KPI(Key Performance Indicator)重要業績指標
ABM(Account-Based Marketing)重点企業を絞ったマーケティング手法
ナーチャリング見込み顧客との関係を継続的に構築すること
ケイデンス(cadence)組織を継続的に動かす定期運営の仕組み(定例会議など)
プレイブック(playbook)「いつ・誰が・何をするか」の実行手順をまとめた行動指針集
アライメント(alignment)複数の部門・人が共通の方向に向かって整列している状態
オーケストレーター複数の機能をまとめて指揮する役割
ステークホルダー関係者(広い意味での利害関係者)
アナリティクスデータ分析の仕組み
エコシステム連携する企業群が形成する生態系
ガバナンス意思決定と統制の仕組み
コミットメント強い関与・約束

よくある質問(FAQ)

Q1. Connected GTM Framework は、どこで初めて公開されましたか?

A. 2026年4月の Forrester B2B Summit North America にて、VP・Principal Analyst の Katie Fabiszak、Principal Analyst の Rick Bradberry らが登壇した「Disconnected GTM Efforts Will Ruin Your Company」セッションで初公開されました。

Q2. Connected GTM Framework と GTM Singularity の関係は?

A. GTM Singularity が「問題提起」ARC 原則が「対応指針」、Connected GTM Framework が「実装方法」という関係です。GTM Singularity が示した5つの構造的圧力に、組織として向き合うための具体的な設計図が Connected GTM Framework です。

(補足:ARC 原則とは、Augmented / 人間と AI の協調、Resilient / 変化への適応力、Collaborative / 部門横断連携 の頭文字を取った、Forrester が示した3つの組織原則です。)

Q3. 5つのフェーズの中で、最も重要なのはどのフェーズですか?

A. 全てのフェーズが重要ですが、Forrester が特に強調しているのは Phase 3(execution requirements / 実行要件設計) です。多くの組織がこのフェーズをスキップした結果、戦略と実行の間に断絶が生まれ、GTM が機能しなくなっています。Phase 3 は Connected GTM Framework のボトルネックであり、Revenue Operations の介入が最も効くフェーズでもあります。

Q4. Revenue Operations は具体的にどんな組織ですか?

A. Revenue Operations は、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断して、レベニュー創出プロセス全体の設計・運営・最適化を担う水平機能です。日本でよく見られる「営業企画」「営業推進」「情報システム部門」とは異なり、部門横断で水平に統合された機能を持ちます。Connected GTM Framework では、Phase 3 〜 Phase 5 の筆頭責任者として位置付けられています。

Q5. 中小規模の B2B 企業でも、Connected GTM Framework は適用できますか?

A. はい。組織規模に依存しない設計思想です。むしろ中小規模の企業の方が、部門間の壁が薄く、Connected な状態を作りやすい場合もあります。重要なのは、5つのフェーズすべてを大規模に運営することではなく、Phase 3(戦略を実行可能なオペレーションに落とし込む層)を明示的に組織内に作ることです。中小企業でも、Revenue Operations 機能を1名から始められます。

Q6. Connected GTM Framework の導入は、どのくらいの期間で進めるべきですか?

A. 状況によりますが、典型的には6ヶ月で診断+ Phase 3 の確立、12ヶ月でクロスファンクショナル・ケイデンスの定着、18ヶ月で Phase 5 の運営化、というロードマップが現実的です。ただし、トップマネジメント(経営層)の強力なコミットメントがあれば、より短期間での移行も可能です。

Q7. ベネクロは Connected GTM Framework の実装をどう支援できますか?

A. ベネクロは、Phase 3 〜 Phase 5(execution requirements / GTM execution / measurement and optimization)の設計と実装を中核支援領域としています。具体的には、(1) 現状診断による Disconnected ポイントの特定、(2) Revenue Operations 機能の組織設計、(3) GTM プレイブック・KPI 設計・データ統合の支援、(4) クロスファンクショナル(部門横断)・ケイデンスの導入と運営支援、を提供しています。


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内村裕香

代表取締役 | CEO and Founder
BtoBマーケティング・RevOpsコンサルタント

内村裕香 プロフィール

2015年から大手総合電機メーカーでBtoBマーケティング組織の立ち上げと社内定着化を主導。Adobe Marketer of the Year 2020 受賞。2024年に株式会社ベネクロを創業し、日本のBtoB企業 ─ 特に従業員300〜2,000名規模の製造業 ─ を対象に、グローバル最前線の知見を翻案した戦略コンサルティングを提供。専門領域はマーケティングオペレーション(MOps)/レベニューオペレーション(RevOps)。Forrester B2B Summit North America 2026 参加・Forrester Certification「Activating the Modern GTM」取得。NPO法人Forum2050 CDO、神奈川ニュービジネス協議会(KNBC)会員。

LinkedIn

https://www.linkedin.com/in/yuukauchimura/

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